2015年5月4日月曜日

東京で坪庭を造りたい

こんにちは。
右都和の土平です。

先月は竹内瑠璃さん、そして辻村塊さんと、立て続けに私たちが大好きな作家さんの個展を開催いたしました。
ともに大好評をいただき、ホッと一息ついています。

実は以前からずっとやりたいと思っていたことがあり、
ゴールデンウイークにチャレンジしましたので、そのお話です。

それは、坪庭、というか箱庭づくり。

京都・祇園にある私たちの関連のギャラリー「かさい」は、
100年ほど前の建物の外装やレイアウトはそのままに、
内装をリノベーションしたもの。
町屋づくりですので、間口の広さからは想像しにくいのですが、
しっかり坪庭があるのです。
決して広くはないのですが、
苔むした地面を上手くデザインし、太陽の光、そして風を採り入れ、
マスターが四季の花を大胆に生け込むことで、
家の中で自然を感じることができる。


大自然に身を置くのとは違った豊かさがそこにあるのです。
その風景がなんとも憧れでしたが、
さすがに一軒家やそれなりのマンションでないと実現できるものではありません。

広くない、いや、間違いなく狭い東京の一般的な住環境の中で、
なんとか自然を取り込む方法がないかと思っていた時に、
辻村塊さんの個展の企画が実現したのです。

個展のタイトルは「花と塊」。
流派や格式にとらわれることなく、
塊さんが自宅でそうするように、
花を自分に任せて生けることで、
暮らしに自然を取り込んでいく…
そんなご提案をしたいという意図でスタートしました。

個展のご案内用に大判のDMを作成することになっていたのですが、
その撮影で塊さんの奈良の工房へ伺った時に出会ったのが、
個展のメインイメージにもなった、この伊賀の花入れです。

横幅約53cm、高さ約31cm。
まさに塊さんのお名前のような〝かたまり〟。
縦型の伊賀の花入れや破れ壷は代表作として知られていますが、
この横型を見るのは初めて。
〝直感的に欲しい〟と思ってしましました。

理由は、
花器としてはもちろん、それ単体として存在していても、
オブジェとしても相当な魅力があるように感じる、
自分のような花に見識がないものでも、
自由に入れてみることを許容してくれる器の大きさを感じる、
塊さんの手で作られたものではあるけれど、
割れ、つぶれについては、
火の仕上げに任せるしかないということ…

何より、これがある場所が、
たとえ階段下や、廊下の角、あるいはリビングや和室の一角であっても、
そこが坪庭になるのではないかと思ったことが
一番欲しいと思った理由です。

家の中で坪庭を実現してみたいと考えている人は
決して自分ひとりじゃないはずと思い込み、
一番売れてほしい、でも売れて欲しくない、
そんな微妙な気持ちで個展『花と塊』のメイン作品にしました。

数名の女性の方には、
ご自身が持っておられるいろいろなアイテムと組み合わせて使えるし、
何より、この存在感は家の中で完全に別世界を作ってくれる、
ということで相当に共感いただきました。
残念ながらご購入まで至らなかったのですが、
(実は女性一人で動かすには、かなり重いので)、
私が自宅に迎えることになったのです。
(自動車が欲しいという家族に対しては、当分召使い状態です)


我が家は借家。
リビングに面して3畳ほどの畳スペースがあり、
そこを「坪庭」の場所としました。
スペース上、ここしかないということもありますが、
リビングダイニングから見える=いつでも触れられる、
ということは坪庭の重要な条件です。
まずは部屋の中の坪庭計画はここからスタートです。

とはいっても、
そのまま置くと畳も傷みますし、
塊さんも「板があったほうが絶対見た目にも良いでしょう」、
ということで、木の板探し。
しかし個展で使うような〝いい感じ〟の木の板は、
実は骨董屋さんでも何万円もするようなもの。
自宅でこれ以上の出費は不可能とのことで、
実は個展期間中から探していました。

ベストではないかもしれませんが、
ずっと使っていた、屋外用テーブル(アクタスで10年前に購入)が日に焼け、
また脚も折れて捨てるタイミングを狙って放置していました。
その天板をバラして、とりあえずは敷いてみようかと。


幅約7cm、長さ約65cm。
かなりギリギリですが、いずれ良い板が見つかるまでってことで、
とにかく試しです。

そのまま敷くと、ささくれで畳が傷つくかもしれないのと、
動かしやすくするために、
木板の裏に、100円均一で買ってきた家具クッションをカットして貼り付けました。

裏はこんな感じです。
板を並べて、花器を置くとこんな感じです。

やはり板はもう少し大きいほうが良いと思いますが、
板に動きをつけてそのあたりは当面ごまかすことにします。
それでも存在感はやはり凄いですね。
家の中に異空間が出現した感じです。

この花器は二つに分かれていますが、
乾かす前は一つだったようで、乾燥の段階でぱっきり二つの割れたとのこと。
塊さん曰く、「狙ってできない自然の造形だからこその面白さ。」
それがこの存在感をさらに大きくしているのだと思います。

実はこの花器を導入前、
近所を散歩している時に、
河原で放置されたいた(と思っている)枝を、
いつか使えるかも、と思って持ってきていました。


とはいえ、生け花の知識も、道具もありません。
さっそくAmazonで購入。

のこぎりと剪定ハサミ、合わせて2,200円。
知識もないので、見た目重視の私は色目で選びました。

花器の差し口は窯の中で熱でつぶれて、
意外に細くなっているので、
枝を適当な長さに切った上で、差し口をのこぎりを使って細くし、
角度を調整しながら試行錯誤。

枝そのものに重みがあるので、
倒れてきてはやはり危険です。
枝片をくさびに使って、枝を固定しました。



ひとまずの完成です。



季節感的なことはさておき!
やってみることが大切と割り切り、
本日はここまでとしました。

まさか自分はこういうことをするとは、半年前までは想像できませんでした。
こういうことを「いつかやりたいな」で終わるのではなく、
「とにかくやってみる」という思考になったのは、
いろんな作家さんとお話し、
工房を訪問する機会をいただく中で、
自然を感じて暮らすことの豊かさを教えていただいていたのかなと思います。

仕事や家庭があるので、なかなか東京から自然へ居を移す訳にもいかない、
いまある環境にいかに豊かさを取り込めるのか…
私にとっては、それを考えることができる環境や思考こそ、
大切なことなのかもしれません。

坪庭、いろいろ遊んでいきます。

(土平)